飛行機内の食事

窓側に座った彼女はそわそわしながらさっきからずっと外を見ている。東京湾のフェリーがミニカーの様に小さく見下ろし、東京タワーとスカイツリーが並んで見えるほど雲一つない状況だ。
羽田 - 石垣間はいつも混んでる路線だけあって平日の午後便にも関わらずほぼ満席状態だった。目線が窓の外から機内に向き、周りを見渡しながらテンションが高くなっているのか「シートが電動で動くよ。ヘッドレストとかもあるし。」と微笑んだ。プレミアシートの空きが出たので、ポイントを使って今回シートアップグレードが出来た。「今回たまたまキャンセル待ちで空きが出たから。帰りは普通だけど」と彼女に言ったがうんうんとノリで返事しているのが分かった。シートポケットのドリンクメニューを見つけてはすぐに取り出し、真剣なまなざしで悩んでいる。
その後彼女は何かをひらめいたような仕草を見せた。「あ、だから空港でランチしなかったのか。ちゃんと言ってくれたらいいのに」若干不満げの表情だったがすぐに笑顔になった。
飛行機の高度が6,000フィート近くになり、シートベルトサインが消えた。待ち構えたCAの動きが慌ただしくなり、ドリンクサービスが始まるや否や「これもいいな、こっちもいいな。あ、これ期間限定だって」とはしゃいている。「おかわりできるから、慌てなくても大丈夫だから」と言いながらもみずなが選びそうなものは分かるから、言わなくても分かるよとアイコンタクトを送った。
昼食のお弁当は素材の味を活かしつつ上品な味付け、「飛行機の食事ってなんかいいよねって」と彼女はうれしそうに言った。
おなかいっぱいになって、彼女の表情から満足感いっぱいだねと伝わってきた。そんな僕はシートの下で彼女の手を握り、ゆっくりとシートに寄りかかった。
他愛もない話をするのに場所は選ばないが、周りに迷惑にならない声のトーンで話し始めた。今朝3時まで話したのにまだ話すのか、と自分で突っ込みを入れた時つい表情に出てしまったのか彼女から「今へんな事考えてたでしょ?」と。お互いしっかり見ているんだし、知っているだからと言われたらその通り、としか言えない。でもそんな彼女と一緒に居られる幸せがあってこそ、僕がいていいんだなと感じた。
飛行機は順調に航行し、種子島、那覇を通過し後30分ほどで到着する地点まで来ている。徐々に高度が下がり、僕たちを乗せた飛行機は宮古島を通過した。