Web Design

Lorem ipsum dolor
sit amet.

Marketing

Lorem ipsum dolor
sit amet.

Development

Lorem ipsum dolor
sit amet.

Consultancy

Lorem ipsum dolor
sit amet.

ゆず茶とのど飴

ゆず茶とのど飴

疲れが出てしまったのだろうか。なんだか喉が痛い。
週末に車で1人大阪に向かい、その深夜東京に残っている彼女が寝付けないと言うから早朝まで電話で話を聞いていた。宿泊先のチェックアウトが午前11時なので寝坊できるとたかをくくっていたが実際には4時間くらいしか寝れてない。僕は日の光を感じると起きてしまう、いや普通の生活をしていればそうだろう。
若干疲れが残ったまま東京まで運転したが、途中高速道路上で消火活動による通行止めが発生し休むに休めないドライブになったことも疲れに拍車をかけてしまったのだろう。

東京に帰り2日後に喉の痛みを感じたので、その日の仕事を早めに切り上げみずなとの会話も最小限にして23時には就寝した。あまり話さなくなったのでひょっとしたら何かを察したかもしれないが、見えない何かがそれを伝えようとすることを止めている。
翌日36.6度の平熱だったが、喉の痛みがなくならない。やっぱりあの時の疲れが出ちゃったのかな、そんな自分が情けないと思った。体温計の数字を見て「私の平熱」と言いながらもそれを察したのか、彼女は僕の喉に手を当ててじっとしている。
何かの気で治す気なのかわからないが、彼女の表情は真剣そのものだ。しばらくしてその手は喉から離れて行ったが、彼女の表情はぱっとしない。
このまま痛みが残ってしまったらどうしよう、そんな心配で不安を感じてしまったのだろうか。常に話題が変わる話ができなくなってつまらない、と思った事もあるのだろうか。
痛みを意識しないようにすると、何かのいたずらなのかのど飴をなめていないと落ち着かない状態だと僕はすぐに気づいた。
それを察したのか、彼女の表情も比例して曇っていく。2人の沈黙がどれくらい続いたのだろう。

いつもならどうにかしないと、と無意識に話し出す僕がいるがさすがに今日はその気力が出ない。そんな自分に失望しかけた時、彼女はポットでお湯を沸かし始めた。
すぐに部屋の中に甘い柚の香りが漂った。柑橘系の香りはリラックスするから、アロマを焚く時もよく使う。待てよ、と記憶をたどっていってある事を思いだした。
すぐに「はい」っとぶっきらぼうに熱くなったコップを差し出してくれた。受け取った瞬間「やっぱりね」思わず声が出てしまったが、同時に答え合わせで満点を取った感覚が体中に流れた。
6月で気温もそれなりに上がっている時期だが、みずなの作ってくれたゆず茶は僕を優しく包んでくれているようで、ゆっくり飲むことで喉の痛みも少しだけ和らいだ。
「寒い時期に飲みきりたかったんだけどね」と早く使い切りたいためにいれてくれたかもしれないが、彼女の気持ちはきっと僕の心を温めて続けてくれるだろう。
そういえばみずなものど飴いつも持ち歩いている事を思いだした。「なんでゆず茶にしたの?」と聞いた僕に「ゆず茶絶対喉に良さそう。ハチミツ、喉にいいからハチミツ入れたらどうなるかな。激甘か。」とテンション高く答えた。
「もう大丈夫だから」と僕もつい強がって言ってしまったが、「「治りかけてるんでしょ、じゃあ寝かせない。ぶり返したらどーすんだよ、病み上がりは無理しちゃダメって習ったでしょ?寝かせたくないって思っても口にするタイミング気をつけなさいよ」と真剣な表情で発する言葉を受け止めざるを得ない状況だった。心配かけちゃいけないと強がってしまったことなんていいから、僕の事を心配してくれている彼女の気持ちを素直に受け止め、早く治すからと伝えた。みずなはゆっくり笑顔を見せてくれた。

SHARE:
あなたへのおすすめ